Sexual stimulant -perfume- 後編









耳の後ろ。
丁度香水を吹きかけた場所に、八剣の息が当たる。






「ッん……!」






腕が解放されると、今度は腹の下に八剣の腕が滑り込む。
抱き込まれる格好になっていた。

京子は耳元にかかる吐息にもどかしさを覚えて身を捩る。
しかし抜け出せない状態になっていて、それは無意味な抵抗にしかならなかった。


情事のスイッチは既に押された。
抱き締める男によって快感を覚え込まされた肢体は、其処から逃げ出す術を持たない。






「ちょ…バカ、揉むなッ…!」






胸を揉む、節ばった八剣の手。
見えずとも体が既に覚え込んだ、その形。

強弱のリズムも、触れるタイミングも、全てが躯に染み付いている。






「ん、ぁ……や…ッ…」






制服の下に八剣の手が滑り込んで、下着の上から胸を愛撫される。
本人の意に反して大きく育ったそれは、形が変わる程に強く、かと思えば緩やかな力で刺激を与えられた。

項にキスが落ちて来る。
するりと舌が滑って、京子の背をぞくりと快感の兆候が奔った。
熱の篭った吐息が喉奥から漏れて、京子はベッドシーツを強く握る。


指の先端が乳首を掠めた。
京子の肩が跳ねる。






「や、あッ……ひぅんッ」
「敏感だね」






乳首に爪の先を当てながら、京子の肩口に顔を埋めて八剣が呟いた。
首筋に当たる八剣の毛先さえ、今は快感を引き出す材料の一つ。


すん、と八剣の鼻が息を吸い込む。
鼻腔をくすぐったのは、普段は香る事のない、甘い匂い。






「どうしてかな…今日はいつもより色っぽく見えるよ」
「し、知る、か……あッん……!」
「香水の所為かもね。そういう商品もあるらしいから」






同じような事を遠野も言っていた。
京子は熱に浮きかけた頭の隅で思い出す。


くりくりと刺激を受けて、下着の上からも判るほどに乳首が膨らんだ。
尖った頂がブラジャーの布に擦れて痛い。

八剣の手は未だ其処から離れず、京子を苛む。
いつもよりもずっと執拗に弄られているような気がして―――そう思う自分を自覚して、羞恥で顔が赤くなった。
その上、止めろとも言えず、されるがままに翻弄されるばかりで。






「や、あッ…! んん…あ、ん……っはぁッ……!」






不用意に動けば、指先に乳首を摘まれて引っ張られてしまう。
一瞬痛みが走るのに、欲に溺れた若い躯は、それさえも快感に変えた。


甘い香りが京子の鼻をくすぐった。
仄かなアンバーの香りが、消え始めた京子の理性を浚って行く。






「八、剣……ん、ん……」






深いキスは決定打。
舌を絡め合い、少し強く据われて、京子の脳は抑制の意思を失った。

離れていくのが嫌で、去ろうとするそれを追い駆け、今度は京子の方が仕掛けた形になる。
八剣はすぅと瞳を窄めて、またリードを奪い、京子の咥内を思う様蹂躙してゆく。






「ん、ふぁ、…うんッ」
「……気持ちいい? 京ちゃん」
「あ、あ……んぅ……」






制服をたくし上げられ、ブラジャーも外されて、京子は仰向けにされた。

点灯したままの部屋のライトに血色の良い肌が照らされ、それはまるで男を誘うよう。
既に何度も見た肢体が、八剣は、今日はやけに艶やかに見えた。


弄られ続けた乳首はすっかり硬くなり、鮮やかなピンク色で自己を主張する。
香る甘い匂いの所為だろうか、まるで弄って欲しいと言っているようにさえ見える。

幻聴でいい。
誘われるまま、八剣はその胸に顔を寄せた。







「あ、ぅんッ!」







片方を揉みながら、もう片方は先端を舌で攻める。
熱い柔らかな熱と呼吸に、京子の息が連鎖反応を起こすように追い上げられて行った。






「は、や…やぁ…! 八剣、や……」
「嫌……では、ないんだろう?」






一つ強く吸い付かれて、京子の喉から甘い悲鳴が漏れた。






「んぁッ…! やだ、吸うなぁ…や、あッ!」






男を胸から離そうと、京子の手が八剣の頭を掴む。
力任せにすれば、彼女ならば八剣を拒否する事は不可能な話ではなかった。
武道の心得があるのだから、何処の筋肉を使えば有効なのか、彼女は知っている。

しかし結局、京子は八剣を拒否できずにいる。






「んぁ、っは…、あ、や……吸う、なってぇ…」
「……そう。じゃあ、こっちかな」
「―――――あぁッ!」






甘噛みされて、京子は背を仰け反らせた。

痛くはない、強い快感でもない。
だけどそれは、もどかしくて。






「いやぁ……」
「ちょっと意地悪だったかな。ごめんね」
「……っん…んんぅ……」






あやすように口付けられて、京子は塞がれた言葉の代わりに八剣の髪を引っ張った。
唇が離れて、痛いよ、と呟かれたけれど、構わずにまた引っ張る。



互いの顔が近くなると、甘い香りが二人の鼻腔をくすぐった。
京子の香水である事は判っているが、八剣は京子自身からその香りが放たれているのではないかと思う。
今までどれだけ密接しても香ったことのない香りだから、それは単なる気の所為なのだけど、溶け合おうとする熱がそう思わせてしまうのだ。


雄を誘う匂いだ。
八剣はそう思った。

発情期の雌の匂いを嗅いだ動物の雄は、こんな匂いで興奮しているのかも知れない。






「京ちゃん」
「…っは……な、ん、……」
「今日の学校、大丈夫だったの?」






豊満な胸を揉みながら問うと、京子は眉根を寄せる。
八剣の問いの意味が判らなかったのだ。






「誰かに何かされなかった?」
「…何、か……って、なんだよ…っんん……」
「例えば――――こういう事だね」






尻の形を撫でると、京子はバカじゃねえの、と呟いた。






「お前、だけだろ…ッ…こんな事すンの……ッ」
「だったら良いんだけど。京ちゃん、鈍いからね。心配なんだよ」






八剣が心配するような事は起きないと、京子は思う。
先ず自分にこんなことをしようとする輩は滅多にいないし、いたとしても殴り倒して終わりだ。
周りにどう見られようと京子は気にしないから、不逞の輩に言いようにされるつもりはない。



八剣も京子が言いたいことは判っているが、それだけじゃない、と八剣は思うのだ。

万が一という可能性はない訳じゃないし、本人は恥ずかしがるので言えば否定するが、根は優しい子だ。
人に対して何かと悪態をついて、戦いに置いても「足手まとい」ときつい口調で吐き付けるのは、その相手を危険な目に合わせたくない気持ちの裏返し。
そんな彼女だから、例えば真神の生徒の友人などが人質にでもなったら、どうするのか。
抵抗する為の刃の切っ先を下ろしてしまう可能性も、考えられない訳ではない。


また、見知った人間に対して、京子はかなり無防備な面がある。
………特に、相棒だと憚らない緋勇龍麻に関しては。






「今日一日、何か変わったことなかった?」
「変わった……あッ…こと……?」






愛撫を施され、息を乱しながら、京子は思い出そうと試みる。

今日一日で変わったこと。
香水のことは今更で、龍麻が目敏く見つけたのも珍しいことではなかったし、恐らく、八剣の求める質問の答えとは違うだろう。


愛撫を甘受しながらどうにか考えて、思い出した事は、





「なんか…野郎が、」
「クラスの?」
「…ん………っは、…妙に……声かけて…」
「やっぱりね」
「あ、んッ!」






乳首を摘まれ、転がされて、京子の口から嬌声が上がる。

何がやっぱりなのか、京子は判らない。






「だから言っただろう。鈍いんだよ、京ちゃんは……緋勇龍麻が相手だと、特にね」
「は? なんで龍麻……あッ…」






この反応。
これだから、八剣の心配は尽きない。


仄かに香る甘い匂いは、雄を誘うもの。
朝からこれを纏っていた京子は、極端に言えばフェロモンを振り撒いているようなものだったのだ。
当てられた人物との仲の良し悪しに関わらず。

この香りを嗅いでしまったら、普段その気のない男でも、“その”対象として見るかも知れない。
どうでも良い相手であれば、京子はさっさと殴り飛ばしてしまうだろうが、知り合いならばどうなるか。
――――――本能を剥き出しにした野獣に対して、一瞬の狼狽は命取りとなる。






「あんなに顔を近付けるまで赦すなんてね」
「あ、れは…龍麻が、匂いがって…ん、ぁ! お、オレの所為じゃね……ッ!」






此処で京子は、ようやく八剣が怒っていることに気付いた。
街中で逢った時、龍麻が京子の耳に顔を近付けていたのが彼は気に入らなかったのだ。

でも顔を近付けて来たのは龍麻であって。
どうせ押し退けても無駄だからと、確かに好きにさせたけれど。
龍麻のああいう行動は、今更目くじらを立てなくてもいいじゃないかと京子は思う。


アイツが勝手に、オレは離れろって―――――繰り返す京子だったが、主張は空回りするばかりだ。










「―――――男は皆狼だって、教えてあげるよ」










囁かれた言葉に、お前が一番狼だろうがと内心毒吐いた。

だって自分にこんな事をするのは、何度も繰り返すが、この男だけなのだ。
京子にとって八剣以上に厄介で物騒でしつこい狼なんて存在しない。




深いキスで、呼吸も理性も何もかも絡め取られて、奪われる。
京子の腕は八剣の首に縋るように巻きついた。


制服のスカートが捲られて、飾り気のないシンプルなショーツが晒される。
八剣が指を押し付けると、秘められた箇所は既に湿って、ショーツに滲み出ていた。

薄い布地の上から秘部の入り口をノックすれば、口付けたままの喉奥から、短い甘い声が漏れる。






「ん、ん、うぅんッ……」






八剣の目の前で、京子の瞳から常の勝気な光が失われていく。
代わりに熱に溺れた眼差しからは、強烈な色香が放たれる。






「っは……そこ…触んなぁ……」
「そればっかりは無理なお願いだね」






くにくにと柔らかい秘肉に、長い指が刺激を与える。
その刺激に反応して溢れ出した蜜液で、ショーツがぐっしょりと濡れて行く。






「や、だめ……あ、ん、はぁんッ……」






濡れたショーツが脱がされると、濡れそぼった秘部が外気に曝け出された。
女としての歓びを覚え込んだ其処は、何度貫かれても未だ鮮やかな色を保っている。

八剣がじっと其処を見下ろしていると、京子の顔が赤くなっていく。
あらぬ場所を晒されることに、京子は未だに慣れない。
普段の気丈さ、男らしさはすっかり形を潜め、まるで生娘のようだ。


形をなぞるようにゆっくりと滑った指先の感触に、京子の足はゾクゾクと震えた。






「ふぁ…あ、あ……見るな、ぁ……」
「恥ずかしがらなくて大丈夫だよ。綺麗だから」
「バカ、言え……ん、はぁッ…!」






入り口を指先で突かれて、京子の全身が悶える。

秘部は雄を誘うようにヒクついて、蜜液が溢れ出していた。
―――――今すぐ其処に、滾る欲望をぶつけても良いのだけれど。






「ほら……此処も甘い匂いがする」
「や…! か、ぐな、そんなトコッ……!」
「香水の匂いとは違うけどね。いつも俺を煽る匂いだよ」
「し、知るか、そんな……ッ」






下肢に顔を近付けて告げる八剣を、京子は見るに見れない。
自分の格好を確認する形もなるし、何より、あらぬ場所をまじまじと見られているのを、自分自身で見たくない。
恥ずかしくて仕方がなかった。


八剣の指がまた秘部をなぞり、今度は内部へと侵入した。






「あ、ぁあんッ!」






甲高い悲鳴が上がる。
八剣はそのまま、京子の秘部の口を押し広げた。






「こうすると、もっと香る」
「いや、あ! ひ、広げるなッああぁッ!」
「京ちゃんの此処は凄くイイ匂いがするんだよ」
「…変態ッ……!」
「酷いね」






ぐりゅっと内部を掻き回すと、京子の躯全体が大きく跳ねる。
繰り返せば、その数だけ細い肢体は反応を見せた。

指を奥へ奥へと進めていけば、肉壁がきゅうきゅうと締め付けようとする。
それをまた押し広げながら、八剣は気まぐれに指を曲げ、爪の先で引っ掛けては、京子の反応を愉しんだ。
快楽の波に囚われた京子に抗う術はなく、されるがまま、シーツの上で艶やかに踊る。






「だめ、あ、あ、やッ…! そこ、やだぁッ」
「良かったよ。誰かに襲われたりしていなくて、ね」






こんな彼女は、他人に見せたくない。
見せられる訳がない。


いつもの気丈な姿でもなく、時に冷たい瞳を見せる顔でもなく。
熱に溺れて喘ぐ顔は、八剣ただ一人だけのもの。

香水の甘い香りは決して悪くはなかったけれど、その所為で男を引き付けてしまうなら必要ない。
何より彼女自身が人を引き付けて止まないのに、これ以上呼び寄せられては八剣の方が堪ったものじゃない。






「も、もう、だめ……あ、あ…!」
「イきそう?」






ぶるぶると身を震わせる京子に囁くと、首に絡められた腕の力が強くなった。
ぎゅうと引き寄せられて、彼女の顔との距離が殆どゼロになる。

間近に迫った熱い瞳で見つめながら、京子は呟いた。








「も……欲し、い…………」








ストレートに訴えられた言葉に、八剣は一瞬瞠目した。


情交においてはいつまでも恥ずかしがっている彼女。
今までそんな言葉を発したことは、一度もなかったように思う。

相当限界に来ているのか、それとも、彼女も甘い香りに当てられたか。






「本当にどうしたんだろうね、今日は……」
「あふ、あ、ん、やぁ……は、やく…八、剣……!」






秘部から指を引き抜くと、また甘い声が上がり、ぷしゅうっと少量の潮が吹き出した。

思わずといったソレに、京子の顔がぼんやりと赤くなる。
熱に浮かされた頭はまともに現状を把握できていないようだったが、感覚的なものだろうか。
吐き出してしまった―――――その感覚の名残が、彼女に僅かに残った羞恥心を思い出させていた。


秘部に埋め込んでいた指を、今度は彼女の唇に当てる。
舌がちょろりと出て、ゆっくりと八剣の指を舐めた。






「はっ……あ、うぅん……」
「気を付けないと、俺以外にこんな事されるかも知れないよ」
「ん、ふ…ふぁ……」
「香水も、もうあまりつけない方がいいかな。誰かに何かされるかも知れないから」






判った? と問いかけて見ても、京子は返事をしなかった。
完全に快楽に呑み込まれている。

ぴちゃぴちゃと水音を立てながら、京子は一心不乱に八剣の指を舐める。
擬似フェラのように思える光景に八剣の雄が熱を昂ぶらせた。






「も…早、く………」
「じゃあ、気をつける?」
「判った、から、……ん…ふ…」






行為が終われば交わした会話の内容は飛んでいるだろうが、八剣は構わなかった。
今だけでも、一先ずその言葉が聞けたので安心した。

それに―――――自分も早く、彼女の熱に溶け込みたい。




捲り上げたスカートの端を持っているように言うと、京子は赤い顔をしたが、言われたとおりにした。
自ら曝け出すかのような格好に、京子の秘部からまた蜜が溢れ出す。

着物を寛げて、ようやく窮屈さから放たれた雄は、既に硬くなり天を突いていた。
大きく怒張した雄を目の前に、京子の躯がふるりと震える。
恐らく、それは恐怖などではなく。


引き締まった足を持ち上げられ、京子の躯は折り曲げたかのようなポーズになる。
全てを目の前の男に差し出し、しとどに濡れた秘部は熱を欲してヒクヒクと収縮していた。

其処に先端を宛がい、ゆっくりと挿入して行く。






「あ、あぁ…あ………!」
「くっ……やっぱり、きついか…」
「っは…あ、んぁあ……」






ズプズプと肉壁を押し広げ、奥へと侵入していく熱の塊。
部屋には、少女の甘い声が絶えず響いた。






「あ、あつ……す、げェ…熱い……」
「京ちゃんも熱いよ…」






顔を近付けて囁くと、京子が恥ずかしがって嫌がるように首を横に振る。
ふんわりとあの甘い香りが漂った。


根元まで挿入を果たすと、八剣は一つ息を吐いた。

締め付けが強い。
これだけで、気を抜いたら全て持って行かれそうだ。






「どう? 京ちゃん」
「っは…あ、あ……ふ、ぁああ……」






耳元で囁けば、躯が震えて反応を示し、また繋がった箇所を締め付ける。






「も…イく、イきそ……」
「じゃあ一緒に、ね」






奥まで挿入っていた雄をゆっくりと引き抜いて、また奥へ。
最初はゆっくりと始めた律動を、少しずつ早めて行った。

突き上げられ、揺さぶられて、京子の胸が揺れる。
捉えて揉みしだき、乳首を摘み転がすと、京子は更に甘い声を上げた。






「んぁッ! あっ、はぁんッ…! 八、剣ッあぁッ!」






パン、パン、と肌がぶつかり合う音がする。
激しさを増す律動にあわせて、京子も腰を動かしていた。






「あひ、あ、激しッ……あ、そこ、そこぉッ!」
「気持ちいい?」
「い、イィ、気持ち、いッ! 奥ッ…当たってッ…!」






理性も矜持も投げ捨てて、夢中になって快感を貪る京子は、何よりも艶やかで美しい。
普段の姿とは一線を隔すその姿に、いつも熱を煽られる。

突き上げの最中に質量を増した雄に、京子が目を見開いた。






「バ……無理、もぅッ……もうムリ……!」






ぎちぎちと、内壁と熱棒とが完全に密着している。
更に律動を続けている所為で内壁は絶えず全体を擦られて、京子の躯がビクンビクンと痙攣した。

これ以上大きくなったりしたら、きっと裂ける。
何度目かの行為の最中、初めて裂けた時の痛みを京子はまだ覚えていた。
脳裏に過ぎったその一瞬に身が震えたが、それは直ぐに快感に流されて消えてしまった。






「あはっ…あ、あ、イく、……イくぅう…!」






八剣の肩に強く掴まって、京子は訴える。
これ以上我慢しろと言われたら、本当に気が狂いそうで。



ラストスパートとばかりに、律動がまた激しくなった。
最奥を貫き、ギリギリまで引き抜いて、また突かれて―――――淫らな声と音ばかりが部屋に響く。








「出る、出ちまうぅう…! んは、ぅうん、あ、あぁあぁあぁ………ッッ!!」








襲い来る熱に耐え切れず、京子は声を上げて絶頂を果たす。
それと同時に、八剣も彼女の入り口に射精した。









































何度か絶頂を向かえ、京子が意識を飛ばして。
目覚めた時には綺麗なベッドシーツに包まれた格好になっていた。

着たままで行為を始めたから、制服は確実に悲惨な有様になっていたことだろう。
カレンダーをちらりと見遣って、今日が金曜日で良かった……とつくづく思う。


八剣は何処に行ったのかと思ったら、バスルームの方で気配がした。
多分、洗った京子の制服を干しているのだろう。
時刻はとっぷりと夜が更けており、外に洗濯物を干しても、朝までに乾きそうになかった。



欠伸をしながら、暇潰しにとテレビの電源をつけた。

リモコンはご丁寧に枕元に置いてあって、恐らく、それは八剣の仕業なのだろう。
京子が退屈しないようにとの手配だ。


今日は何の番組をやっているのか、ぼんやり考えながら適当にチャンネルを替える。




と、ある番組で京子の指が止まった。
通販番組だ。







(……香水)






いつもなら全く興味を持たない番組である。
いや、今だって別段興味が湧いた訳ではない。

京子の意識を捉まえたのは、テレビに映し出された香水。


ビンはシンプルな作りで、外国メーカーのものだと女性販売員が説明する。

此方、オリエンタル系で、バニラをベースに作られる甘い香りです。
此方は同じオリエンタル系で香りも甘いのですが、此方はアンバーを使用しておりまして、ワイルドな香りが楽しめます。
それから、此方はアニマリック系になりまして………

述べられる単語の半分以上が理解出来ないが、京子にとって解説はどうでもいい。
それよりも、並べられた商品の一つに意識は奪われていた。



今朝、アンジーが京子に似合うと言って吹き付けた香水と同じだった。



説明は続き、特徴、その特徴による作用など、女性は楽しそうに語る。
何気なく見ているだけなので、やはりその説明も京子は右から左に聞き流していたのだが、









『此方の香水はフェロモン芳香をブレンドしておりまして、異性を惹きつける効果も……』

『気になる男性と二人きりになる時や、最近どうも彼が冷たい……と思う方、ご使用されてみては如何?』

『彼が貴方の魅力に気付いてくれるかも! きっと、ぐっと距離が縮まりますよ』









……京子はベッドに突っ伏した。
なんでチャンネルを替えなかったのか、今更ながら後悔する。




ああ効くさ。
縮まるだろうさ。

今まで話したことねー奴が声かけてきてたし。
確かに、龍麻の顔も近かった気がするし。
………この有様だし。

多分そうなんだろうよ。


情事の最中、何かと香水について色々言われたのは辛うじて覚えていた。



アンジーに悪気がないのは判っている。
でも。







(……悪ィ、兄さん……)







少しだけ恨んだ事は否めずに、此処にいない彼女に心の中で謝った。






















意外に「にょたエロ大丈夫ですよ〜」との声がありまして。
「何処まででもOKです!」と言うメッセージも頂きまして。
そんな訳で調子に乗って書きました(爆)。エロレベル2ぐらいです(当社比)。

連載等の話よりも京ちゃんをえっちにしたくて頑張りました。
これと同じ設定で、今度は誘い受けの京ちゃん書きたいです。多分同じようなネタで。