Seaside school X






四日目ともなると、生徒達のはしゃぐ様も幾らか落ち着いてきた。
皆揃い揃って海にまっしぐらだったのが、各々のグループに分かれて好き好きに過ごすようになる。

外で駆け回る事を好む活発な生徒達は相変わらず浜辺へ、屋内が落ち着く生徒はホテルの部屋やロビーで読書等。
買い物好きの女生徒はホテル内や浜辺近くの土産物屋に溜まり、ご当地土産に目移りしている。
明日はこの近辺で夏祭りがあり、生徒達は自由参加となっている事もあって、ホテルで貸し出しされる浴衣を見に行った生徒もいた。



そんな中で、龍麻は小蒔達に誘われ、浜辺でビーチバレーに興じていた。


砂浜に足で引いた線でコートを作り、海の家で貸してくれるバレーネットを張って。
龍麻と醍醐、小蒔と葵と言う男女チームに分かれ、遠野はいつものようにカメラでシャッターチャンスを狙う。

…其処に京子の姿はなく、彼女は最初からこの遊びに参加していなかった。
龍麻が小蒔達に誘われた時、彼女は龍麻と一緒にいたのだが、気乗りしないと言って一人何処かに行ってしまった。
そんな京子に一同は顔を見合わせたものの、―――恐らく昨日の彼女の様子を思い出したのだろう―――気が向いたら今度は自分から参加しに来るだろうと思う事にして、去って行く彼女を見送った。


いつものメンバーに一人足りないとは言え、五人は皆十分に楽しんでいた。
そもそも、京子が一人で勝手にふらりと消えるのはいつもの事であるし。




けれども、龍麻はこっそりと、ほんの少しだが落ち着かない自分を自覚していた。






「あー、」






女子陣のコートを大きく通り過ぎて行くボールを目で追って、龍麻はそんな声を漏らした。


軽いビーチボールは、海からの風に流され易い。
その上龍麻の腕力である、強く打ち過ぎてしまった感は否めない。

幸いにもボールは遠くまで風に運ばれる事はなく、審判兼撮影係となっている遠野の傍へと落下した。






「アン子ー、パスパスー」
「うん。行くわよー」






ぽーんと放られたボールは、丁度良く小蒔の元へと跳んで行く。
しっかりとそれを受け止めて、今度は小蒔がボールを構えた。






「行くよー!」






一声かけて気合を入れてから、小蒔はサーブする。
ボールは綺麗な流線型の弧を描き、ネットを飛び越して龍麻と醍醐のコートへと運ばれた。


龍麻が走り、腕でボールを跳ねさせる。
ボールはふわりと浮かび上がり、直ぐに醍醐が女子の陣へと打ち返す。

小蒔がトスをし、葵がレシーブを上げて、ボールは高く上空へと跳んだ。
ネット近くへと落下して行くボールとタイミングを合わせ、小蒔は助走を付けて砂浜を蹴り、跳躍する。
細くしなやかな肢体が踊り、振り被られた腕が勢い良くボールをアタックした。


猛スピードで地面へと落下するボールを拾い上げたのは、やはり龍麻だ。






「醍醐君!」
「おう!」






龍麻の拳によって鋭角に方向を変えたボールは、またしても頭上高くに跳ね上がる。
巨漢を活かした力を持って、醍醐はボールを打った。






「うわッ!」
「あッ」






咄嗟に小蒔がボールに飛びついたが、ボールは軽く跳ねただけ。
葵がカバーしようとするも間に合わず、決着は着いた。

15-10でゲームセット。
これで龍麻・醍醐チームの三戦三連勝となる。


てんてんと砂浜を跳ねたボールを遠野が拾い、がっくりと肩を落とす小蒔と葵に歩み寄った。






「やっぱ敵わないねー」
「うー、悔しいッ」
「もう少しだと思ったのに…」






決して負けっ放しの成績ではなく、小蒔も何度かアタックを決めている。
流れが二人に向いた事もあったし、風を味方に着けてマッチポイントまで持って行くことも出来た。
しかし、どんなにそのチャンスを掴んで見せても、龍麻の運動神経がそれを上回るのだ。

その結果、勝利は龍麻と醍醐のものとなり、小蒔と葵は負け続き。


そもそも男女分かれてのチーム編成では、有利不利は明らかだ。
その上、醍醐は多少動きが遅いが体躯を活かした力とブロック、機動力は龍麻一人で十分補える。
反して小蒔は運動神経が良いが、葵は平均並みと言ったものだから、彼女達の敗戦は最初から色濃いのである。



だと言うのに何故そんなチーム編成になったかと言うと、原因は醍醐にある。

中々見慣れない水着姿の小蒔と一緒にいると緊張するし、かと言って彼女が龍麻と組むのは我慢できないらしい。
龍麻が京子と既に恋仲であるとしても。
好いた相手を他の男と並べたくない気持ちは、龍麻も少なからず判るような気がした(しかし自身の恋人には全くその理論は通用しないのだが)。

そうして、葵は苦笑し、遠野は呆れ、小蒔は相変わらずの鈍さで彼の心中に気付かぬまま、男女別々のチーム編成となった。






「京子がいれば勝てると思うんだけどなァ」






しみじみ呟く小蒔に、葵も頷く。


龍麻・醍醐というチームに敵う女子戦力と言ったら、真神学園の全校生徒を探しても、彼女以外にはいないだろう。
彼女を加えて、二対三の編成になって初めて、女子陣は男子陣とイーブンになるのだ。

だが当の本人は何処に消えたのやら、まだ合流しに来る気配はない。






「そう言えば、何処にもいないわよね、京子」
「ええ。本当に何処に行っちゃったのかしら」






遠野と葵が辺りを見回しながら言い、龍麻と醍醐も周りをぐるりと見回した。
すると確かに、同校の生徒達が駆け回る中に、見慣れた彼女の姿は見付けられない。


なんとなく。
なんとなく、龍麻はそれが落ち着かない。






「緋勇?」
「探してくるよ」






コートを離れた所に、何処に行くのかと声をかけられて、端的に答える。
そのまま離れて行く龍麻を、誰も追って来ようとはしなかった。

三戦連続での試合だったので、休憩するには丁度良い。
海の家にいるね、葵の声が背中からかかって、龍麻は肩越しに振り返って手を振った。
言葉通りに四人は高台へと上がる階段側の海の家へと向かっている。




さて。
探すと言ったが、何処をどう探そうか。


これが学校ならば行く場所は限られているのだが、生憎此処は不慣れな土地だ。
余り遠くに行くとも思えないが、浜辺の近くと言う線は薄いと見て良いだろう。
この周辺一体は生徒達が駆け回っており、彼女はのんびりとは出来そうにない。

ならば壁の陰であるとか、木陰が出来た場所を重点的に探すとしよう。
賑やかさから少し離れた所であれば、彼女がいつも昼寝をしている学校の中庭の木の上に近いものがありそうだ。




人の気配が感じられる所にはいない。
そう考える事にして、龍麻は浜辺の外側――――堤防となっている石壁に沿って歩いた。

時刻は正午過ぎを迎えた頃なので、此処には殆ど陰はない。
けれども、堤防上でしな垂れている木があるので、点々とではあるが、日陰は確かに存在していた。


今日という日もまた見事な快晴で、海から吹いてくる風がなければ暑いばかりの一日になっていたのは想像に難くない。
となると当然、彼女も風が通る場所にいる筈。

日陰で、風が通り易く、尚且つ人気の少ない所。

浜辺に彼女の姿は見られないが、海岸沿いならいるかも知れない。
生徒達が遊ぶのは殆ど開けた浜辺と海の中で、少し外れた場所には誰も向かいそうにない。
彼女はそういう所を見つけてるのが得意だった。






(猫みたい)






そんな事を考えて、龍麻は小さく笑った。


少し肌寒い時は、日がよく当たり、風が入ってこない所に。
今日のように暑い時は、陰が出来て、風が吹きぬける所に。

だから彼女は、学校の中庭の木の上と、屋上を常連のサボリ場所にしているのだろう。
特に木の上にいる時などは、まるで其処が自分だけの居場所だと陣取っているようだ。
他の誰にも其処を譲らせない様は、縄張りを定めた猫のようだ。



堤防の壁に沿って歩いていたら、いつしかそれは終わっていた。
綺麗に整えられたコンクリートの堤防から、石垣を積み上げた壁へと変わる。
その頃には、足元も浜辺ではなく、川原のような石積みになっていた。

広い砂浜によって遠くに見えていた波間が近くなり、石積みの地面を歩く龍麻の足元に波を寄せる。
寄せては返す波に合わせて小さな飛沫が飛び、龍麻の足を濡らした。


後ろを振り返れば、白浜はまだ直ぐ側にあったのだが、生徒達の賑やかな声は随分と遠い。
足元の波の音の方がよく聞こえてくる位だ。





此処なら、多分―――――その予測通り、彼女の姿をその場で見つけるまで、然程時間はかからなかった。





京子は、波打ち際に陶然と佇む岩の上にいた。

龍麻の腰ほどの高さのある岩で、彼女は其処に寝転がっている。
頭上には広葉樹の木が大きく枝を伸ばして陽光を遮っており、心地良い日陰を作り出していた。


腕で枕を作り、冷たい岩の上に寝そべった京子は、いつも強気に光る瞳を瞼の裏側に隠している。
遠目に見ると眠っているように見えて、龍麻もそうなのかも知れないと、近付く足取りの速度を緩めた。
だが彼女愛用の木刀は確りと傍らに添えられており、いつでも直ぐに起き上がれるのだろうと見て判る。



近くまで来て判った事だが。
彼女の肌はしっとりと水気を含んで濡れていた。

此処は木陰で涼風にも恵まれているが、大気はやはり陽光に熱されて熱い。
滲む汗を冷やす為に、何度か海に入ったのだろうか。
そうして冷えた体を岩に乗せて、目を閉じ、緩やかに一人過ごしていたのか。


水着もやはり濡れており、黒に緋色の桜を咲かせた生地はぴったりと彼女の体のラインを魅せている。
上に薄手のパーカーを羽織ってはいたが、此方も少し水分を含み、前は止めもせずに肌蹴させて。

綺麗なくびれを描いた腰や、すらりと伸びた脚の太腿などが無防備に一人の男の前に晒されていた。



唇が微かに開いて、規則正しい寝息を立てている。





―――――龍麻は、そっと、己の唇と彼女のそれを重ね合わせた。






「……ん……」






鼻にかかったような声が漏れて、龍麻は唇を離して小さく笑む。


ゆっくりと京子が目を開けた。
寝起きのぼんやりとした光が、龍麻を捉える。






「……たつま、……?」
「うん」






名を呼ぶ声に答えると、京子は目を擦りながら起き上がる。






「なんか用か?」
「ううん。何処にいるのかと思って探してただけ」
「そーかい」
「うん」






ぐっと背筋を伸ばす京子。
しかし岩から降りる様子はないので、まだ仲間達の所に戻る気はないようだ。






「皆でビーチバレーしてたんだ」
「ふーん」
「僕と醍醐君が一緒のチームで、美里さんと桜井さんが一緒のチーム」
「ンな事したら、お前ェらが勝つに決まってんじゃねェか」
「だから桜井さんが、京がいたら勝てたのにって言ってたよ」
「どうだか」






相手が龍麻一人であれば、なんとか互角に行けるかも知れない。
しかし醍醐のパワーは流石に京子も勝てないので、其処を突かれるとやはり負け色が濃い。

だが、京子が参加すれば、葵と小蒔だけの時よりも勝率が上がるのは確かだ。


「戻ったら一緒にやろう」と言う龍麻に、京子は「気が向いたらな」といつもの素っ気無い台詞を返す。
気乗りしないと言う風ではあるが、戻れば結局、小蒔に押されて参加するのは間違いないだろう。




岩の上で胡坐をかいて落ち着く京子の隣に、龍麻も腰を下ろす。



眼前に広がる、青と蒼。


昨日も似た光景を見たと思う、これとは反対の色で。
その時は鮮やかな反面、何処か寂しさを感じる景色であったのに、何故だろうか。
蒼と蒼、そして雲の白に彩られた世界は、何処までも遠く広がり、あるのは大自然の力強さ。

彩る色彩が違うだけで、こんなにも印象が違うとは不思議なものだ。


それは、隣に座る少女にも当て嵌まる。






「なんだ?」






見詰める龍麻の視線に気付いて、振り返った京子が問い掛ける。
なんでもないよと微笑むと、京子は一度眉根を寄せたが、いつもの事と思ってか直ぐに気にしなくなった。



しっとりと濡れた髪を掻き揚げて、京子は空を仰ぐ。
龍麻はその様をじっと見詰めていた。


昨日の夕暮れ時は、何処か儚く見えたのに。
今目の前にいる少女は、いつもの勝気で男勝りな京子に戻っている。
昨日の出来事は幻だったのではないかと思う程、いつも通りだ。

でも龍麻はそれで良い。
どんな彼女でも龍麻は全て受け入れるつもりでいるけれど、やはりいつもの彼女が一番好きだから。


だから今日一日、妙に落ち着かない気分だったのだろう。
いつもの彼女が、いつものように直ぐ傍にいなかったから。






「京」
「あ?」






名を呼べば、いつものようにぶっきら棒な返事が返ってくる。
それが嬉くて、龍麻は京子の頬に唇を寄せた。






「ッ!!」






途端、弾かれたように京子は龍麻から逃げる。
驚いた猫が飛び上がる仕草と似ていて、龍麻はクスクスと笑った。






「何しやがんだ、バカ!」
「何って、キス」
「言うなッ!!」






握っていた木刀が振るわれる。
が、龍麻はそれを片手で受け止めた。

京子が木刀を引くよりも早く、龍麻は京子から木刀を取り上げた。
獲物を失った手が一瞬彷徨い、取り返そうと伸ばされる。






「返せッ」
「返すよ。後で」






食って掛かってきた京子に、ぶつけるように唇を押し付けた。
ゼロ距離にある京子の瞳が見開かれ、何が起きたのか把握出来ていないのが見て取れる。


滑り込ませた舌を、京子のそれと絡ませて、咥内をまさぐる。
現状を把握して来た京子の肩が小さく跳ねて、艶の篭ったくぐもる呼吸が零れた。

それを窄めた瞳で見詰めながら、龍麻は取り上げた木刀を岩の上に置く。
京子の手はもう木刀を追いかけようとはせず、冷たい岩肌に乗せられていた。






「ん、ん……ッ」
「ふ……」
「…ふぁ……」






ちゅ、と音を立てて離れた唇。
解放された京子の瞳は、熱に浮かされてトロリと溶け始めていた。

そんな恋人の背中を抱いて、龍麻は柔らかな乳房に手を重ねる。
柔らかな力で揉むと、甘い声が京子の喉奥から零れ出す。






「あッ、や……ん……」
「京………」
「んん……!」






耳元で囁かれた甘い男の声と吐息に、京子は躯を震わせて頭を振る。


――――――そう言えば。
昨日は波の狭間で何度もキスをして、それきりだった。

だから、ではないだろうけれど、京子は嫌がるような素振りは見せても、逃げようとはしない。
水着と言う開放的な格好をしている所為なのかも知れない。
寧ろ委ねようとしているようにも見えて、龍麻は少し嬉しかった。






「あッ、あ…んふ……うぅん…」






何度も揉んでいると、頂がツンと尖り出す。
水弾きの良いナイロン生地を押し上げる其処を摘んで、クリクリと捏ねた。






「や、ん、あッ…! 龍麻…ッ」






水着の上から歯を立てる。
ほんのりと塩の味があった。

愛撫を続けて行く内、京子の躯の強張りが緩み始め、岩に突っ張っていた腕も弛緩する。
ゆっくりと仰向けに倒れて行く彼女に従って、龍麻は京子の上に覆い被さった。






「ん、あ、ん、んッ…んん、くぅん……ッ」






尖る乳頭を指先で押して離すと、またツンと尖る。
何度も繰り返し弄っていると、京子の喉から甘えるような声が上がった。


――――――ふと。
京子の腰が震え、太腿を擦り合わせているのを見つける。
多分、彼女は無意識だろう。

仰け反って露になった首にゆっくりと舌で舐め上げ、吸い付いた。
ピクッと震える痴態に愛しさを覚えながら、龍麻の手は恋人の秘所へと伸ばされる。


するりと脚の間に滑り込んできた手に、京子が肩を跳ねさせた。






「やッ、龍麻……ぁッ…」






濡れている所為で、水着はぴったりと彼女の肌に張り付いている。
双丘の輪郭もしっかりと象られており、京子の頬がみるみる赤くなっていく。






「んッ、や、……離せッ」
「いや」
「あんッ…!」






水着の上から、指先を立てて秘部を押す。
ナイロンの薄い生地一枚を隔たりにして与えられる刺激に、京子は身悶えた。

頭を振って嫌がる素振りを見せる京子の頬に、あやすようなキスをして。
龍麻は京子の左足の膝に自分の手を滑らせ、押し開かせる。
水着を着たままとは言え、既に情交のスイッチは入り、京子にとってはただ裸身を晒すよりも羞恥心が感じられる。






「あッ、あん、んんッ!」
「濡れてるけど……これって、」
「み、水だ、水ッふぁ…! う、んんッ、海入ったから…あッ!」






龍麻が言わんとした言葉に真っ赤になって、京子は否定する。
しかし、それにしては何処か粘着質な音が聞こえるように思うのは、龍麻の気の所為ではなく。






「はあ、ん…くぅッ…! や、あ……!」






押す力を強めてやれば、水着の生地が伸びて、そのまま秘部に龍麻の指が埋め込まれる。

京子は岩肌に爪を立て、爪先をピンと伸ばして硬直させる。
龍麻は仰け反り露になった京子の喉に唇を寄せ、食むかのように浅く歯を立てた。


突き上げるように秘部を攻め、奥へ奥へと押し進もうとする指に、京子の躯が呼応して跳ねる。






「あッ、あんッ……はぅッうぅん…! んくッ…」
「気持ち良い? 京」
「バカッ……あぁッ…!」






一定の深さまで達すると、龍麻の指はそれ以上先へ進まなくなった。
伸び切った水着の生地の所為である事は一目瞭然で、京子にはそれがもどかしい。






「…龍麻…ッ…龍麻、ァ……!」






恋人の名前を呼びながら、京子は腰を揺らして龍麻を誘う。


龍麻は秘部から手を離した。
京子の腰を抱き寄せて、唇を重ね合わせ、深く舌を絡ませ合う。
寄せて返す波の音の合間に、ちゅく、と言う卑猥な音が混じる。

贅肉と言う言葉とは無縁の京子の脇腹を撫で、ラインをなぞりながら、龍麻は再び手を秘部へと伸ばす。
今度は水着の中へと滑り込んだ無骨な手に、京子は顔を真っ赤にし、ぎゅうと目を閉じて龍麻にしがみ付いた。



茂みを潜って埋めた其処は、やはり海の所為ではなく、濡れていて。






「あ、あッ……! あぁあ…ッ!」






ビクン、ビクンと躯を痙攣させながら、京子は龍麻の与える快感を享受する。






「ひんッ、ふぁッ…! 龍麻、ぁあ……! ひゃ、んッ」






二本目を挿入させて、皮肉を押し広げて行く。
その傍ら、龍麻は京子のふくよかな胸に顔を埋め、谷間に舌を這わせていた。






「あ、あ、だめッ…や、んぁあ……」
「京、良い匂いするね」
「…ッ……そこで、喋んなッ…あ…!」






嫌がる京子に、じゃあこっち、と龍麻は再び京子の胸に顔を寄せた。
尖る頂に甘く歯を立てれば、甘い声と共に、秘部が龍麻の指を締め付ける。
絡み付く肉壁を解すように、龍麻は二本の指で彼女の内部を擦る。






「はッ、だ…やめッ…!」
「イきそう?」
「んぅ、あぁ……ッ!」






戦慄く京子の躯は、限界が近いことを切に訴えていた。
決定打となる熱を欲しがって、京子は自らの意思で脚を開いて行く。

そのまま、龍麻は最奥へと指を潜らせようと―――――――










「あ、いたいた。京子ー!」


「!!!!!」









響いた明るい声に、京子は反射的に、自身に覆い被さる男の体を目一杯押しのけた。
加減と言う言葉は遥か遠くに忘れて、潜在している力も全て以て。


純粋な力勝負で言えば、京子よりも龍麻の方が分がある。
それは男女の体の構造の違いによる致し方ない差であり、どんなに鍛えても京子は龍麻に追い付かないだろう。
龍麻が普通の高校生だったら別の話だろうが、生憎、龍麻は古武術を扱う。
鍛え抜かれた体は、武道家としては同じレベルにあっても、体の構造による単純な数値差は覆せない。

しかし京子とて、並の女は元より、そこら辺で屯しているような男よりはずっと鍛えられているのだ。
特に堪忍袋の緒が切れてリミッターが外れた時など、吾妻橋一人位なら簡単に背負い投げ出来る。



――――――結果。



思わぬ反撃であった事もあり。
思わぬ介入者に、龍麻もまた驚いていた事もあり。
予期する暇もなかった京子からの押す力に、龍麻は素直に従う結果となり。

岩から落ちた龍麻の体は、直ぐ側を寄せては返していた波間へと落ちる事となった。






「………あれ? なんかボク、来ない方が良かった?」






そんな言葉に京子が赤い顔のままで振り返れば、バツが悪そうに頬を掻く小蒔。
邪魔だったかなァと呟く小蒔に他意がないのは明らかだが、京子は益々顔を赤くする。






「緋勇君、見つけてくれてたんだ。……なんか悪かったね」
「別にッ! ンな事ある訳ねーだろ。で、なんか用か!?」






動揺で京子の声が裏返っているのは明らかだ。
小蒔もそれに気付いてはいたが、なんでもないと本人が言うから、それを信じることにしたのか。
小蒔はちらりと、波間に尻餅をついている龍麻を見遣りつつ、






「ビーチバレーやるから、京子も参加して貰おうと思ってさ。ボクと葵だけじゃ、醍醐君と緋勇君に勝てないし」
「おぉ、やるやる! やるに決まってんだろ!」
「そー、なの? やる気しないって言ってた気がするけど…」
「あ? なんの話だ? 今はやりたい気分なんだよ」
「そう? まぁいいけど」






じゃあ先に戻ってるよ、と言って、小蒔は踵を返す。


離れて行くクラスメイトを見送りつつ。
京子は肌蹴ていたパーカーを―――いつもは気にもしないのに―――手繰り寄せて、肌を隠そうとする。
ぎりぎりと歯を噛んでいる京子は、恥ずかしさで沸騰しそうな顔をしていた。

龍麻は京子のそんな様子を、寄せて返す波間の冷たさを感じながら見上げていた。
これは怒るだろうなぁ、と思いつつ。


そして龍麻の想像通り、パーカーの前のジッパーを上げて、京子は木刀を握って立ち上がる。






「こンのバカ龍麻ッ!」
「……さっきのは僕の所為だけじゃないと思うんだけど」






小蒔の乱入は龍麻とて想定外である。
しかし京子は、更に憤慨し。






「お前ェがこんなトコで盛るからだろーが!」
「京も結構乗り気だった、」
「黙れこの苺バカ!!」






がつん、と龍麻の頭から硬い音が鳴る。
京子の木刀が落ちた音である。

怒りでこれまた加減を忘れた一撃だ、しかも脳天を叩かれたとあっては龍麻でも当然痛い。
頭を抱えて蹲った龍麻を、京子は仁王立ちして見下ろし、睨む。
しかし表情は般若か鬼かと言うよりも、恥ずかしくて堪らない、と言ったもの。


龍麻は痛む頭部を摩りつつ、ようやく波間の中から立ち上がる。
海パンはともかく、またしてもパーカーが濡れてしまったが、これで既に三度目。
気にするのも面倒になって、取り敢えず裾だけを絞って置いた。






「でも京、大丈夫なの?」
「あ? 何が」






京子の声は低く、ドスが聞いている。
が、龍麻にそれが通用する訳もなく、龍麻はいつもと変わらぬ調子で言葉を続けた。







「ほら、途中だったから――――――」

「死ねッッッ!!!」







物騒な叫びと共に跳んできたのは、脚。

綺麗に窮鼠に食い込んだ衝撃に、龍麻は逆らうことなく吹っ飛び。
今度は波間などではなく、確りと海へと飛沫を上げて着水したのだった。












その後のビーチバレーにて。
鬼気迫るアタックを、コートではなく龍麻目掛けて放つ京子の姿があった。
















デリカシーのない龍麻(笑)。
京子が相手ですからね。京ちゃんも結構デリカシーないですから。

小蒔に悪気はありません。
探してて見つけたから声をかけただけで、龍麻が水に落ちたのも二人のいつもの遣り取りなので特に気にせず。
そして二人がナニしてたかも気付いていません(良いんだか悪いんだか…)。